「曖昧な望み」を「具体的な予定」に変える方眼ノート術

夢は「書くこと」で現実になりうるといいます。たとえば映画『マスク(1994)』で知られる俳優のジム・キャリー氏は、無名時代に大スターになって大金を稼ぎ出す夢を抱き、「1,000万ドルと書いた手づくりの小切手」をお守りのように持ち歩いていたのだとか。その夢が実現したことは世界中が目撃しているはずです。

ある女性の場合は、実際に叶えた夢のディテールを、何年も前の日記に予言のごとく書き記していました。夢とまではいかなくとも、モヤモヤと頭のなかにある「やりたいこと」を書き出すだけで現実味が増し、「未定」が「予定」に変わることもあります。詳しく説明しましょう。

「書くこと」で夢を叶えた人々

マリアンはたくさんの子どもを抱えながら、アルツハイマーの母親の世話をするという大変な生活を送っていました。そんな彼女が書いていた日記には、のちに彼女が事業者として関わることになる、家庭的な雰囲気の「グループホーム(※1)」を示す内容が書かれていたのだそう。

驚くべきことに、その内容が書かれたのは、まだ本人が介護事業に関わる意識などなかったときでした。マリアンはこの体験を「叶いそうにない夢を書き、実現したこと」と伝えています。冒頭で紹介したジム・キャリー氏のエピソードも、この言葉どおりではないでしょうか。

また、ある人物は高校生のころ弱小運動部に所属していましたが、チームみなで部室の壁に「目指せ、インターハイ出場」と書いた紙を冗談めいた気持ちで貼っていました。すると、本当にインターハイ出場を果たして周囲を驚かせたそうです。じつのところ、一番驚いたのは当の本人たちでした。

(※1. グループホーム:認知症の⾼齢者が、専門スタッフの援助を受けながら共同生活を送る小規模の介護施設)

 

なぜ「書くこと」が役立つのか

前出のマリアンは夢を叶えるにあたり、「“書くこと” が重要なプロセスになっていたことに驚かなかった」と語ったそうです。なぜならば、夢を書き出すことで自分が「把握していること」や「望むこと」が明確になるから。自分の望みがわからないかぎり、何かを達成するのは難しいでしょう。

また、書くことにより、まずは自ら1歩を踏み出さなければ、何も始まらないと気づいたのだとか。さらに、物事が順調に進んでいると示すサインを書き連ねることで、行動する勇気を与えられたそうです。

単純な作業でありながら、「書くこと」には多大な効力があるのですね。

物事が順調に進んでいると示すサインを書き連ねているビジネスパーソン

「書くこと」で刺激される脳のメカニズム

マリアンの事例を著書で紹介したクロウザー博士によれば、「書くこと」は脳のRAS(Reticular Activating System)を刺激するそうです。RASとは網様体賦活系を指す言葉で、脳科学辞典によれば、覚醒状態を維持する脳内メカニズムのこと。日本NLP協会監修の「NLP学び方ガイド」の説明によれば、関心事の情報を集める際に鋭敏になる脳の機能です。

たとえば、ダイエット中の人が「やせる」「脂肪燃焼」といったキーワードに敏感になることも、その働きのせいなのだとか。

クロウザー博士いわく、書くことでRASが刺激されると、大脳皮質に「目覚めよ、注意して細部まで見逃すな」という信号が送られるとのこと。つまり、夢や目標などを紙に書き出すと、脳が注意を呼び起こしてくれるのです。

脳のRAS(Reticular Activating System)が刺激され覚醒した女性

「未定」を書けば「予定」になる

もちろん冒頭で述べたように、夢とまではいかなくても、なんとなく “こうしたい” と思っていることを書くだけでも効果があります。

未定事項をバレットジャーナル式(※)に書き出してみたところ、言葉で具体化したせいか現実味が増し、「未定」が「予定」に変化しました。

上記を実践した目的は「頭のなかの “曖昧なもの” をノートに書き出し、脳の負荷を減らして仕事に集中できるようにすること」でしたが、今回は「やりたいと思っているが、曖昧でハッキリしないこと」を実行に移していけるよう、ノートに書き出してみようと思います。

ちなみにクロウザー博士は、行動を躊躇するときは何かしら理由があるので、何を不安に思い、何をかたくなに思い込んで二の足を踏んでいるのか、書き出してみるようすすめています。

(※. バレットジャーナル式:ライダー・キャロル氏考案の、箇条書きで1冊のノートに記録・管理するノート術)

カフェで曖昧な計画を書き、具体化しているビジネスパーソンあるいは学生

曖昧なことを書き出してみた

これまでの内容をふまえ、以下の項目で書いてみることにしました。

  1. モヤモヤと頭のなかにある「やりたいこと」
  2. やりたいことの「背景にあるもの」「躊躇する原因」「実行のアイデア」など

線を簡単に引きやすく、文字もきれいに見える「方眼ノート」(8mm方眼罫6号・セミB5)をヨコ使いにして書きます。毎回書くのは面倒なので、上の項目は1と2の数字のみで示すことにしました。書くスペースはあえて狭くして、「たくさん書かなければ!」というプレッシャーを軽減します。

実際に方眼ノート上につくったフォーマット

こうして書いてみたら、意外な発見がありましたよ。

モヤモヤした思いには深さがある

頭のなかでボンヤリと望んでいたことや、そのテーマについて書き出してみると、想像以上にすぐスペースがいっぱいになってしまいます。頭のなかでモヤモヤしていただけで、実際にはいろんな思いが詰まっていたのですね。

実際に筆者が書いてみた方眼ノートを使った「未定」が「予定」に変わるノート術

書き方がバレットジャーナルのように箇条書きになっていますが、これは書きやすさから、自然とそうなったかたちです。ちなみに筆者が書き出した「やりたいこと(1の項目)」は、以下のように取り留めのないものでした。

  • 音楽をつくってみたい
  • 昔の体型に戻りたい
  • バラバラに置かれている本をなんとかしたい
  • 映画に関わるサイトをつくりたい

前項で説明したとおり、1の項目で「やりたいこと」を書き、2の項目では内容を限定しすぎず、「やりたいことの背景にあるもの・躊躇する原因・実行のアイデア」などを、自由に書き足すようにしています。

たとえば「音楽をつくってみたい」という思いには、子どもの頃楽しかったオルガンでの自由な創作活動が、いまだからこそ意味あるものだと感じ、あの感覚をまた味わいたくなった背景がありました。そして、手段がないから行動するのを躊躇しているが、「方法は探せる」と自覚することもできました。

簡単なフォーマットでも、こうして書けば思考が整理され、考えていることが立体的になって、具体化し、取り組みを始めるヒントが生まれやすくなるでしょう。おすすめです!

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