心臓病のリスクを減らす?5つのスパイス

インド料理の虜になるのには訳がある。甘い芳香のバスマティライス、クリーミーなカレー……だがいちばんの魅力はスパイスだ。ひとつの料理に10種以上のスパイスが使われるのはよくあることで、その独特の組み合わせが味覚を喜ばせるのかもしれない。実は、それはあながち間違いではないようだ。どうやら私たちは遺伝子レベルでインドや他国の料理のスパイスを好むように生まれついているらしい。その理由は、ヨーロッパ分子生物学研究機構(EMBO)の学術記事によると、ターメリックに含まれる抗がん作用があるクルクミンや、チリパウダーに含まれる心臓病予防につながるとされるカプサイシンなど、スパイスには健康を促進する化合物が含まれているからだという。私たちの祖先が有害な食べ物から安全なものを選り分けたとき、彼らはスパイスはまったく無害だと判断した。その結果、スパイスを好んだ者たちはより健康になり、長生きをし、スパイスを好む子孫を残したのだろう、と研究者たちは推測する。


今回は、常にスパイスを楽しみながら健康を維持できるように、世界中の科学者たちにもてはやされる、インド料理でおなじみの5つのスパイスに絞った。それぞれの効能や1日の適量、基本的な使い方を知って、自分の料理のレパートリーに取り入れてほしい。

ショウガ

 
心臓病 スパイス ショウガ

起源
原産地は中国だが、今は世界中で栽培されている。この口の中をピリピリさせる根には甘味も辛味もあり、アジア料理で非常によく使われる。

効能
ショウガは、伝統的な中国医療、アーユルヴェーダ(インド)、ユナニ医学(古代ギリシャ、ペルシャ、アラブの医学)において、さまざまな病気の治療薬として長い間使われている。また現代科学においても、妊娠や化学療法による吐き気の予防や治療に効果があることが裏打ちされている。研究では、ショウガは消化管内での食物の通過を早め、軽い便秘や消化不良、さらに生理痛も和らげるとされている。試験管実験では、辛味や匂いの元となるジンゲロールやショウガオールなどの成分が、がん細胞を死滅させたり、増殖を抑制することがわかっている。

1日の適量
1日分は、乾燥ショウガ小さじ1/4〜1/2。吐き気を抑えたり、消化促進、便秘予防には小さじ1/8程度。毎日小さじ1〜2杯のすりおろしたショウガを生のままか、熱いお茶に入れて飲んでもよい。

摂取の仕方
ニンニクと合わせて、香り高い料理やヒーリングティーをつくろう。

おすすめの料理
● 鶏や魚のカレー
● フレッシュ・ハーブチャツネ
●スパイスラブ(他のスパイスと混ぜて肉 や魚などにすり込んで使う)
● ジンジャーハニー・ティー

チリパウダー

心臓病 スパイス チリパウダー

起源
メキシコの人々は、8000年も前から赤唐辛子を食べていた。15世紀になってようやくクリストファー・コロンブスと乗組員が唐辛子を発見し、ヨーロッパにもたらされた。その後、ポルトガルの商人がインドに持ち込み、唐辛子はすぐに欠かせない食べ物となったといわれる。唐辛子は世界中で栽培されているが、今はインドが主要な生産国となっている。

効能
唐辛子は、乾燥させたホールか、挽いたチリパウダーの状態で売られている。熱を産生するカプサイシノイドという成分が含まれており、その主成分としてよく研究されているのがカプサイシンだ。「唐辛子が辛いほど、カプサイシンの含有量も多い」とクリシュナプラ・スリニヴァサン博士は言う。インドのマイソールにあるインド中央食品技術研究所の主任科学者だ。カプサイシンには抗酸化と抗炎症作用があり、多くの面で私たちの体を守ってくれる。たとえば、コレステロールを下げて、心臓病やコレステロールが原因の胆石のリスクを減らす効能がある(スリニヴァサン博士は、唐辛子を多く摂取するインド人は他国の人々に比べて胆石になるリスクが低い、と語る)。また唐辛子は満腹感をもたらし、一時的に新陳代謝を上げるので、健康的な体重維持にも効果がある。『Appetite』誌の調査によると、スパイシーな食事やカプサイシンのサプリメントを摂取した後は、辛くない食事や偽薬を摂ったときに比べて、エネルギー摂取量が74kcalも少なかったという。たいした量に思えないかもしれないが、数回食事をすれば、その数値は加算されていく。
またチリパウダーは、食べ物の栄養吸収も高めてくれる。「腸の中にある絨毛という栄養を血流に運ぶ細い毛状の組織が大きくなり、ビタミンの吸収が高まるのです」とスリニヴァサン博士は説明する。

1日の適量
はっきりとはわかっていないが、インドでは、他の唐辛子を好んで食する地域の5~10倍の量が使われているとされる。スリニヴァサン博士は1日の量として、小さじ1/2から3/4を数回の食事に分けてふりかけることを勧めている。これは乾燥唐辛子の2~4本分にあたり、インド人の平均摂取量の半分だ。

摂取の仕方
風味のいい料理に辛味を加えよう。

おすすめの料理

● アジア風スープ
● ダルやレンティルなどの豆料理
● 網焼きの肉料理
● トマトベースのカレー

ターメリック

 
心臓病 スパイス ターメリック
起源

ウコンを乾燥させて挽いたターメリックは、アジアの国々で少なくとも2500年間スパイスとして使用されている。インドが主要な輸出国。

効能
インドや中国医学で必須のターメリックは、栄養学研究者たちが今注目しているスパイスでもある。その理由は、黄色い色素成分のクルクミンにある。クルクミンには、糖尿病や心臓病、がん、アルツハイマーなどの疾患を予防したり緩和させる効果があるといわれている。「クルクミンに加えて、ターメリックにはさらに100以上の有効成分が含まれていて、それらの相乗作用によって効能が生まれているのです」と語るのは、サーディオ・プラサド博士。テキサス州ヒューストンにあるMDアンダーソンがんセンター実験治療学部の博士研究員だ。
この相乗効果が強力なのは、ターメリックの素晴らしい効能を見れば明らかだ。たとえば、消化性潰瘍や過敏性腸症候群(IBS)の症状の緩和、タバコに含まれる発がん物質の影響を抑制するなどが挙げられる。さらにインド歯科研究の学術記事では、練り歯磨きをつくることを勧めている(材料はターメリック小さじ1、塩小さじ1/2、マスタードオイル小さじ1/2)。1日に2回歯ぐきに塗ると、歯肉炎や歯周病に効果がある。

1日の適量
1日分は、約小さじ1/2で十分だが、体調によって増やしてもよい、とプラサド博士は言う。クルクミンは脂溶性なので、油やココナッツミルクと一緒に調理をすると吸収がよくなる。黒コショウや白コショウと併用しても吸収率が上がる。

摂取の仕方
比較的まろやかな味なので、さまざまな香りのレシピに使える。

おすすめの料理

● 豆やひよこ豆の料理
● 米料理
● レッドカレー、イエローカレー
● 野菜炒め

クローブ

心臓病 スパイス クローブ

起源
クローブはクローブの木の花蕾で、乾燥させてホールか挽いた状態で使う。原産地はインドネシアで、インド、アジア各国、タンザニア、ブラジルなどでも栽培されている。1800年に、かの東インド会社がインドにクローブをもたらした。

効能
クローブは、フランスの研究では、植物に含まれる抗酸化成分のポリフェノールを最も多く含む食べ物トップ100の1位にランクされている。言い方を換えると、挽いたクローブの小さじ1杯には、抗酸化作用抜群のスーパーフルーツであるブルーベリー1/2カップと同量の抗酸化成分が含まれている。
今のところ、クローブとポリフェノールについての研究は、試験管や動物研究で行われている段階だが、初期結果を見るかぎりでは有望だ。たとえばクローブには抗酸化物質のオイゲノールがふんだんに含まれており、メラノーマ細胞の増力を抑制することがわかっている。また没食子酸も豊富なので、記憶力の改善や、パーキンソン病やアルツハイマー病を引き起こす脳の炎症を抑えるといわれる。

1日の適量
適量はまだ明らかではないが、ほんの少量でも効果が続く。口にするとメントールのような風味がぱっと広がるが、多すぎると口がヒリヒリするので気をつけよう!

摂取の仕方
他のスパイスと合わせて料理に使うと芳醇な風味が立つ。

おすすめの料理

● ココナッツベースのカレー
● フルーツのコンポート
● 温かいハーブティー
● ビリヤニライス

シナモン

 
心臓病 スパイス シナモン

起源
シナモンは、シナモンの木の樹皮を剥ぎ取って乾燥させてつくられ、スティックや挽いた粉状で売られている。アメリカで販売されるシナモンのほとんどは、中国、ミャンマー、ベトナム、インドネシアで育ったカシアの木からとられたものだ。適量であれば問題ないが、日常的にたくさんの量(小さじ1/2以上)を摂取していると、クマリンという毒性物質が肝障害などの疾患を引き起こす可能性がある。それ以外にスリランカや南インド原産の「セイロン」あるいは「トゥルー」というシナモンの木があるが、かなり毒性は低い。こちらはオンラインショップや自然食品店で入手できる。

効能
シナモンが血糖値を下げるという研究報告について疑問視する声もあるが、カリフォルニア州のウェスタン健康科学大学の最新の調査では下がることが立証されている。2型糖尿病の人たちが毎日シナモンを小さじ1/4から2杯摂取した結果、血糖値が25㎎/dLと大幅に下がったのだ。糖尿病予備軍や血糖値が正常な人でも、糖分の多い飲み物を摂取した後に起こる血糖値の上昇が抑えられる、という研究結果もある。

1日の適量
2型糖尿病の人々は毎日小さじ1/4から2杯のシナモンを4~18週間摂取すれば大幅に血糖値を下げることができるとさまざまな研究で報告されている(2型糖尿病の人々が血糖値を下げるには、毎日小さじ1/4から2杯のシナモンを4~18週間摂取すれよいと報告されている)。このデータはシナモンのカプセル摂取によるものだが、普段の食事に直接適量のシナモンを加えてもよい。

摂取の仕方
ガラムマサラ(インドのミックススパイス)や、甘い物、香りの良い食べ物に加えよう。

おすすめの料理
● クッキーやフルーツブレッドなどの焼き菓子
● ビーフカレー
● マサラチャイ
● ライスプディングやアイスクリーム
 

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