「脳の機能を高める単一のビタミンとか奇跡の食べ物といったようなものは存在しません。脳の機能を高めるのは、全体的な食事のパターン」下記で紹介する食材や食品を組み合わせて、毎日の食事に取り入れてみてほしい。
1.ビタミンB12
効果
あらゆる細胞にとってきわめて重要な栄養素。タンパク質と脂肪をエネルギーに変える。また、そのほかの反応にも関与していて、脳細胞を傷つけない働きをする。不足すると、物忘れや気分の落ち込み、認知機能障害のほか、精神病までも引き起こす可能性がある。長期間不足すると、回復不能な損傷を脳にもたらす。加齢により吸収されにくくなるため、50歳になったらビタミンB12の血中濃度を測定する血液検査を受けよう。60歳超のアメリカ人の30%がビタミンB12不足となっている。
豊富に含む食材*
特に多く含む食材:ハマグリ、アサリ、カニ、イガイ、牡蠣(イースターン・オイスターと真牡蠣)、ニジマス、サケ、イワシ
多く含む食材:牛肉、特大サイズの卵、ほとんどの魚(ヒラメ、カレイ、オヒョウ、ティラピア、メバル)、無脂肪牛乳(スキムミルク)、無脂肪または低脂肪のプレーンヨーグルト、一部のチーズ(モッツァレラ、スイス、1%カッテージチーズ)注)ビタミンB12は動物由来の食物だけに含まれるため、完全菜食主義の人は医師にサプリメントについて相談しよう。
2.食物繊維
効果
興味深い研究では、腸内バクテリアが気分に影響を及ぼす可能性があるという。腸内バクテリアの好物のひとつが食物繊維だ。
特に多く含む食材:豆類(黒豆、インゲン豆など)、ブラックベリー、梨、ラズベリー、食物繊維の多いシリアル、食物繊維の多いクラッカー(全粒ライ麦のカリカリしたパンなど)、全粒の穀物(ブルガー小麦、キヌア、小麦粒など)
多く含む食材:アスパラガス、ブロッコリー、芽キャベツ、カリフラワー、ほとんどの果物(リンゴ、バナナ、オレンジ、桃、イチゴなど)、ナッツ類とシード類(特に、アーモンドとひまわりの種)、オートミール
3.葉酸塩(葉酸は、サプリメントに用いられている合成製剤)
効果
ビタミンBの一種である葉酸塩はDNAの合成を助ける。つまり、脳細胞を含め、あらゆる細胞にとってきわめて重要である。また、脳も含め全身で神経伝達物質(化学的伝達物質)の生成に関与している。不足すると、ビタミンB12の場合と同じ症状が現れる(精神疾患による入院患者の1/3以上が、葉酸塩欠乏状態にある)。
特に多く含む食材:黒豆、ササゲ、ヒヨコ豆、インゲン豆、レンティル豆、ほうれん草
多く含む食材:ロメインレタス
4.鉄分
効果
(血中のヘモグロビンの形で)脳細胞に酸素を運ぶ働きをしている。不足すると、注意力が低下し、一時的にIQの低下さえみられるほか、疲れやすくなる(ただし、サプリメントによる鉄分の過剰摂取は脳に悪影響を及ぼす可能性があるので、注意が必要)。
特に多く含む食材:牛レバー、イガイ、真牡蠣
多く含む食材:黒豆、ヒヨコ豆、インゲン豆、レンティル豆、真牡蠣以外の牡蠣、カボチャの種
5.マグネシウム
効果
脳細胞間の神経伝達を助ける働きをしている。マグネシウムの血中濃度が低下すると、うつ病や薬物依存などがみられることがわかっている。
特に多く含む食材:カボチャの種
多く含む食材:アーモンド、カシューナッツ、オート麦のふすま、小麦のふすま
6.オメガ3魚油(DHAとEPA)
効果
脂肪の多い魚に含まれるオメガ3の一種であるDHAは、ニューロン間の神経伝達を活性化し、炎症を抑える。体内ではほとんど生成されないため、食事でとる必要がある。DHAはEPAと共に、脳に至る動脈の血液をサラサラにして脳卒中のリスクを低下させる。
特に多く含む食材:脂肪の多い魚(ホッキョクイワナ、サバ、サケ、イワシ、マス)、牡蠣、脂肪の少ない魚(オヒョウ、メバル)
多く含む食材:ほとんどの白身魚、脂肪の少ない魚(ナマズ、タラ、ティラピアなど)
7.ビタミンC
効果
抗酸化物質であり、DNAを損傷するフリーラジカルから細胞を保護する。このほか、神経伝達物質の生成と、脳内の血管の形成にも関与している。
特に多く含む食材:ブロッコリー、芽キャベツ、キャベツ、マスクメロン、カリフラワー、グレープフルーツ、ケール、キウイ、オレンジ、パパイヤ、イチゴ
多く含む食材:ジャガイモ、トマト
8.亜鉛
効果
亜鉛は、さまざまなタンパク質や酵素など、健康な脳を構成する物質の生成を助け、ニューロンの神経伝達が正常に行われるのを助ける。亜鉛不足は、認知症やうつ病の発症に関わっている。
特に多く含む食材:タラバガニ、牡蠣
多く含む食材:ササゲ、牛肉、ロブスター、豚ヒレ肉、豆腐
* 「特に多く含む食材」とは、1人分の分量(動物性タンパク質約50g ~ 80g、豆腐3/4カップ、牛乳、ヨーグルトまたはカッテージチーズ1カップ、チーズ約50g、果物または野菜1カップ、葉野菜2 ~ 3カップ、豆類、穀物または芋類3/4 ~ 1カップ、クラッカーまたはナッツ約50g)で、その栄養素の1日の所要量の40%以上を摂取できる食材。「多く含む食材」とは、1人分の分量で所要量の20 ~ 40%を摂取できる食材。(食物繊維だけは基準が異なり、1人分の分量で1日の所要量より5g多く摂取できるものを「特に多く含む食材」、3 ~ 5g多く摂取できるものを「多く含む食材」としている)。