老けない食べ方

老化の根源は「細胞の酸化」…食事で抑制できる!?

 

老化は「体の中のサビが原因」とよく言われますが、体がサビるとは「酸化」することを意味します。臓器や皮膚はすべて細胞の集まりであり、その細胞が酸化することが老化の出発点。酸化とは、体内で発生した「活性酸素」が細胞を攻撃し、老化を引き起す現象。酸化を抑えるためのエイジングケアは細胞レベルで行う必要があり、特に重要なのが毎日の食事です。

「老化のスピードを遅らせるには、体の中の『酸化ストレス』を減らす必要があります。まずは酸化ストレスについて説明しましょう。体に酸素が取り込まれるとその一部は活性酸素に変化し、体内に侵入したウイルスなどから体を守る働きをします。しかし増えすぎた活性酸素は細胞を酸化させるため、通常は抗酸化物質が活性酸素の量を一定に保つように調整しているのです。ところが抗酸化物質は年齢と共に減少するもの。結果として活性酸素過多になり、活性酸素と抗酸化力のバランスが崩れた状態を酸化ストレスと呼んでいます。活性酸素が細胞を攻撃すると細胞の新陳代謝が低下し、細胞内に不純物や老廃物の残骸がたまり、その蓄積がさらに酸化ストレスを助長させて老化が加速していきます」(岩崎真宏さん)

酸化ストレスを抑制するには抗酸化力を高めることが大切。そのためには抗酸化成分を豊富に含む植物性食品、つまり野菜や果物全般を積極的に摂ることが推奨されています。外国人と比べて日本人が実年齢より若々しく見えるのは、きめ細かい肌質によるところが大きく、それは四季を通して豊富に揃う、野菜や果物を料理に取り入れてきた我が国の食文化の恩恵だと考えられます。昨今は食の欧米化が進んでいますが、若々しくいるためにも日本食の素晴らしさを見直し、エイジングの救世主といえる抗酸化成分を食事から摂るように心掛けましょう

「ここでエイジング対策として、果物を食べるときに注意したいことを説明します。糖質を含む果物は、一定の摂取量を超えると逆に酸化ストレスが悪化させるので気をつけましょう。目安は「1日2.5回、1回あたり80kcal」です(80kalの目安はリンゴ1/2、ミカン2個、イチゴ1パック)。つまり「80kal×2.5回=1日200kcal以内」であれば果物はアンチエイジングに効果的に作用すると考えていいでしょう。一方の野菜は摂取する回数や分量に制限はありません。エイジング対策には抗酸化作用のあるビタミンC・E、リコピン、ポリフェノール、またアントシアニン、イソフラボン、ケルセチンなどフラボノイド系の野菜や豆類を意識して摂るようにしてください」(岩崎真宏さん)

抗酸化作用のある栄養素を含む野菜の一例

・ビタミンC・・・青ピーマン、にがうり、ブロッコリー、カリフラワー、キャベツ

・ビタミンE・・・カボチャ、ニラ、ホウレンソウ、モロヘイヤ、唐辛子

・リコピン・・・トマト、ニンジン

・ポリフェノール・・・タマネギ、ホウレンソウ、ナス、ゴボウ、レンコン

・フラボノイド・・・セロリ、エシャロット、ケール、大豆、小豆

老化を進めるもうひとつの原因「糖化」とは?

老化のスピードを速めるもうひとつの原因が「糖化」です。細胞の酸化が体の「サビ」と言われるのに対して、糖化は細胞の「コゲ」と言われやはりアンチエイジングの大敵です。糖化とはどのような状態を指し、どんな物質が関係しているのでしょうか。

「体内でたんぱく質と糖が結びつくことを糖化と言い、それによって生じるAGEという物質が老化を促進させます。AGEは体内の組織に沈着して炎症を引き起こし、細胞障害を起こして老化を促すので要注意。糖にはいくつか種類がありますが、最もたんぱく質に反応するのは果糖です。果糖を含む果物などを摂取すると約2時間でたんぱく質を糖化させてAGEを生み出します。果物は抗酸化成分が豊富なアンチエイジングフードであることに間違いありませんが、AGEを増やさないためには食べ過ぎないことが大事。果物の摂取量の目安は「1日2回、1回当たり80kcalまで」となります。カロリーオーバーにも注意しましょう。

AGEの含有量が多い食品にも注意が必要。ソーセージやピザ、ベーコン、焼いた肉、フライドポテトなど、焦げ目のついた食べ物や、焼く・炒める・揚げる高温調理で作られた料理はAGEが多く含まれます。調理法は、茹でる・煮る・蒸すがおすすめ。またクエン酸は、AGEの吸収を緩やかにすると言われているので、高温調理の食べ物にはお酢やレモンをかけたり、抗酸化作用のある緑黄色野菜を一緒に食べるようにすると良いでしょう」(岩崎真宏さん)

イラストAC

「また、女性に多い貧血も老化と関係があります。貧血は酸素の運搬役である血中の赤血球が減少し酸素不足になると起こる症状ですが、体の隅々まで酸素が行き渡らないと細胞の新陳代謝が低下して肌の老化スピードが速まります。赤血球の数を維持するには、エネルギー源である糖質(ブドウ糖)が必要なので過度な糖質制限は控えたほうがいいでしょう。糖質制限のリスクはほかにもあります。糖質を摂取して食後の血糖値が上がると分泌されるインスリンには血管の伸縮を促す作用があって、糖質を控えてインスリンを出さない食生活を続けると血管が硬くなり血管の老化が加速することに。ダイエットのために無理な糖質制限は行わず、ごはんやパンなどの主食を適度に摂取するようにしましょう」(岩崎真宏さん)

血管・肌・骨を若々しく保つ食事のワンポイント

血管を柔らかく保つ

「老化は細胞から始まることは前途した通りです。血管もまた内皮細胞や平滑筋細胞といった細胞の集まりであり、加齢とともにこれらの細胞が衰えると血管が硬くなり、酸素や栄養素の運搬効率が低下。すると細胞が枯渇して肌のハリや髪の毛の艶が失われていくことに……。酸素や栄養素の運び役である血管をしなやかに保つ栄養素は、魚に多く含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)です。多価不飽和脂肪酸の中のオメガ3系脂肪酸に分類され、常温で固まりにくく体内に入ってもサラサラの状態にあり、血管細胞を柔軟に保つ効果が期待できます」(岩崎真宏さん)

ハリのある肌を維持する

「年齢を重ねてもハリのある肌を保つには、化粧水や美容液で外から栄養を与えるだけでなく、体の内側から働きかけることが大切です。鍵となるのが血管の柔軟性の維持。血管をしなやかに保つことで肌細胞に十分な栄養が行き届き、同時に老廃物が滞りなく排出されて肌細胞が活性化されます。ここでも欠かせないのが前途したEPAとDHAであり、どちらも体の中で合成できないため魚を食べる習慣をつけましょう」(岩崎真宏さん)

骨粗しょう症を予防する

「骨は硬すぎず、もろすぎず、しなるぐらいがベストな状態。健康な骨の鍵を握るのが、骨を作る骨芽細胞と骨を破壊する破骨細胞のバランスです。閉経前の女性はエストロゲンという女性ホルモンが破骨細胞の働きを抑制していますが、閉経してエストロゲンの分泌が止まると破骨細胞が増えて骨粗しょう症になりやすいもの。骨にとってカルシウムは大事ですがあくまでも骨の材料であり、カルシウムから骨は作られません。骨形成に必要な骨芽細胞を活性化させるには、動物性の脂肪や糖を摂取すると小腸から血中に分泌されるGIPホルモンがポイントです。肉を食べている高齢者にかくしゃくとした人が多いのは、骨の丈夫さと関係があると言っても過言ではありません」(岩崎真宏さん)

「これだけ食べておけば若さを保てる」という理論はなく、肉、魚、野菜などをバランスよく摂ることが大切です。そう考えると年齢を重ねてからの過度なダイエットは禁物。健康的な美しさを目指して、体に必要な栄養素を意識的に毎日の食事から摂るようにしましょう。

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