日本のカレーは大きく二通りに分類されます。スパイスを効かせた「インドカレー」と、小麦粉のルーでとろみをつける「欧風カレー」です。
インドカレーといってもローカライズされ、現地よりもうま味を強調した味が多く、後者も欧風という名前ですが、もちろんヨーロッパに日本のカレーのような料理はありません。どちらも日本独自に発展したものです。今回はインドカレースタイルのチキンカレーの作り方を紹介します。
カレー作りは「どこまで予算をかけるか」で分岐点があります。例えばスパイスを買うとして、種類をそろえようとすると意外とコストがかかってきます。1回の使用量は少ないのですが、スパイスは使い切りで売ってないからです。また、頻繁にインドカレーを作る人でもない限り「スパイスを使い切れない」という問題も発生します。
そこで提案するのが「クミンシード」+「カレー粉」でつくるカレーです。三十数種類の以上のスパイスがブレンドされているカレー粉を使って土台を作り、そこにクミンでスパイス感を出していきます。クミンはパウダーではなく、シードの状態であれば長期間の保存に耐えますし、応用範囲の広いスパイスなので、ここは1つ購入しましょう。
チキンカレーの材料(3〜4人前)
鶏もも肉 1枚(260g〜280g)
ヨーグルト 50g(加糖タイプ、無糖でも可)
塩 小さじ1/2
カレー粉 大さじ1
サラダ油 大さじ3
クミンシード 小さじ1/2
しょうが 20g(すりおろす)
にんにく 8g(すりおろす)
炒め玉ねぎ 180g
トマトピューレ 150g
水 300ml
はちみつ 小さじ1
塩 適量(小さじ1/4)
しょうが(皮付き)とにんにくは、あらかじめおろし金ですりおろしておきます。さて、カレーの味のベースになるのは玉ねぎです。このレシピでは玉ねぎを2個分使いますが、通常は玉ねぎを飴色になるまで炒める工程が必要で、慣れた人で15分程度、慣れないと1時間程度かかります。
しかし、最近では「炒め玉ねぎ」という商品が売られています。自分で玉ねぎを炒めてもいいのですが、この商品であれば270円程度で買えるので、手間と時間を考えれば無駄な投資ではないはず。
もう1つ、うま味の要素としてトマトを加えます。トマトの加工品は大きく分けて
・ホールトマト
・トマトピューレ
・トマトペースト
があり、ホールトマトはトマトをトマトジュースで煮て缶などに詰めたもの。(類似品としてはホールトマトをあらかじめカットしたカットトマトもあります)トマトピューレはそれを潰して濃縮したもので、トマトペーストはさらに煮詰めた製品です。
カレーにはフレッシュトマトからトマトペーストまでなんでも使えますが、今回は煮込み時間を省略するためにトマトピューレを選びました。
鶏もも肉は一口大に切ります。1枚を9等分にするといいでしょう。
鶏肉に塩を振り、ヨーグルトで和え、10分ほど置きます。
そのあいだにカレーソース作りです。
煮込み用の鍋にサラダ油大さじ3とクミンシードを入れ、中火にかけます。すぐにクミンシードから泡が出てくるはずです。クミンに含まれている糖とアミノ酸が褐変反応を起こし、特徴的な香り(ピラジン類)が生じます。この工程によってスパイスカレー独特の風味が生まれるのです。
しょうがとにんにくのすりおろしを加えて、さらに炒めます。
すりおろしたしょうがとにんにくが茶色く色づいてきたら、焦げるのを防ぐために炒め玉ねぎを加え、火を弱火にします。混ぜながら30秒ほど炒めればカレーのベースができました。
そこにヨーグルトでマリネした鶏肉を加えてさらに炒めます。
30秒〜1分ほど炒めて、鶏肉の表面が白くなったらトマトピューレとはちみつを加えます。トマトピューレはこの半分の量でもいいのですが、半分だけ残っても扱いに困るので1パックの分量にしました。そうするとトマトの酸味が強く出るので、はちみつの甘さでバランスをとっています。半量にするのであればはちみつは必要ありません。
カレー粉で風味をつけます。
この段階でカレーの味になっていますが、鶏肉に火を通しつつ、さらに鶏の味をソースに加えつつ一体感を出すために水300mlを加えます。
蓋をずらした状態で、弱火で20分ほど煮込みます。
この状態になれば出来上がりです。
火が強い or 煮詰める時間を増やせば濃度が強くなりますし、逆に火が弱いor 煮詰める時間が短ければ水分の蒸発量が少なくなるので、さらっとしたカレーになります。20分を目安に調整してください。
また、塩小さじ1/4で味付けしますが、煮詰め具合によって、塩の量も調整する必要があるかもしれません。カレーの味は塩で決まるので、気持ち濃い目を心がけて味付けをしましょう。
基本のインドカレーは市販の炒め玉ねぎとトマトピューレを使っているので、30分もあればできてしまいます。もっとスパイシーにしたい場合は、
・最初にクミンシードを炒める段階で赤唐辛子を1本入れる
・カレー粉を増やす
・ガラムマサラ(仕上げ用スパイス)を加える
などのアプローチが考えられます。うま味が欲しい場合は、
・鶏肉の量を増やす
・顆粒の鶏ガラスープの素を少量加える
などの解決策があります。インドカレーのレシピは3種類、あるいは4種類のスパイスで作るようなシンプルなものか、店で出すような本格的なレシピが多いですが、これはその中間的なレシピ。カレー粉にはスパイスが三十数種類配合されているので、簡単に複雑な味が出せます。
慣れてきたら単体で加えるスパイスの種類(例えばコリアンダーやカルダモン)を増やしていってもいいでしょう。要素の多いカレーは深い世界で、ハマる人が多いのもうなずけます。
おまけ:キャベツのピクルス
カレーはオイル煮の一種で、油を多く使います。そのため、らっきょうや福神漬のような酸味のある付け合せがよくあいます。カレーと一緒にぜひ作って欲しいのがこちらのキャベツのピクルス。
キャベツのピクルス(作りやすい分量)
キャベツ 200g
塩 4g(キャベツの2%)
酢 大さじ1と1/2
カレーと一緒にスプーンで口に運べるように、キャベツは粗みじんにします。
2%重量の塩を振って、20分置きます。
キッチンペーパーなどで軽く絞り、表面の水気を減らします。
あとは酢で和えれば出来上がりです。酢は米酢がおすすめですが、穀物酢でもかまいませんし、レモン汁という手もあります。カレーに酸味の効いた野菜の歯ざわりが加わると飽きずに食べられます。