頑張って勉強したのに、なぜか理解が浅い気がする
勉強して覚えたはずの内容を、いつの間にか忘れてしまっている
そんなあなたには「勉強した内容を自分の言葉で『説明』する」という勉強法がおすすめ。じつは、誰かに口頭で教える、文章としてまとめるといった「説明」のプロセスを経ることで、知識は頭のなかで整理され、長期記憶として定着しやすくなるのです。
とはいえ口下手だったり、文章を書くのが苦手だったりすると、学んだことをどう言葉にすればいいのかわからないものですよね。そこで今回は、 “説明勉強法” を行なうときに使える2種類の「説明の型」をご紹介します。
「説明できれば理解が深まる」と言える理由
勉強した内容を「説明」することがとても重要性です。インプットには
- 「自分が理解し、納得するためのインプット」
- 「あとでアウトプットするためのインプット」
の2種類が存在します。どちらのインプットをするかによって、理解度には大きな差が生まれます。
まず前者のインプットでは、自分が「なるほど、そういうことか」と思っただけで終わるので、ただ知識がぼんやりと頭に入っているにすぎない状態となります。
対して後者のインプットは、「この内容についてあとで説明するんだ」と思いながら行なうもの。当然、知識が不十分では説明できないわけですから、おのずと “誰かに説明できるレベル” へ至るまで情報を吸収することに。
後者のインプットのほうが、より理解が深まるのは明らかですよね。アウトプットすることを前提にインプットすると格段に記憶に定着しやすく、成績も上がりやすくなります。
すなわち、勉強の効率は、インプットのあとに自分の言葉で説明するステップを設けることで、大きく上がると言えるのです。
説明をすることは、脳のメカニズムの観点でもたしかに重要であると言えます。
「知っていることと関連づけながら整理する」というプロセスを経ると、神経細胞どうしのネットワークが生まれ、知識が長期記憶として定着しやすくなります。
そもそも「説明」とは、「“未知の知識” を “既知の知識” によって言語化する」という作業であるはず。
たとえば、「NFT(※)とは、唯一無二性を保証された一点物のデジタルデータのことである」と説明するとき、「NFT」という “未知の知識” を、「唯一無二」「一点もの」「デジタルデータ」などの “既知の知識” を使って言語化していますよね。
つまり、「説明」をすると、“未知の知識” が “既知の知識” のネットワークに落とし込まれるため、理解が深まるのです。
なお、説明しながら勉強するうえで大切なのは、テキストなどの言葉を写すのではなく「自分の言葉で説明する」こと。たとえ拙い説明であっても、自分が知っている言葉を組み合わせつつ、「こういうことかな」と推理・推論することを心がけるのです。
勉強仲間や家族に対して口頭で教えるのでも、文章としてまとめるのでもよいでしょう。その際に役立つ「説明の型」をふたつ、次項以後でご紹介しますので、ぜひ使ってみてください。
(※NFT……Non-Fungible Token(非代替性トークン)の略。ブロックチェーン技術により唯一無二性を証明された、デジタルアートなどのことを指す言葉。
勉強に使える説明の型1「PREP法」
文章作成のフレームワークとして知られるもののなかから、勉強にも使える説明の型を紹介していきます。
まず取り上げる「PREP法」は、「Point(結論)・Reason(理由)・Example(実例)・Point(結論)」の4要素から成る型。ライティング指導などを行なう中野巧氏によると、PREP法を使うと、結論を重視した説得力のある文章が完成するそうです。「学んだことを誰かに伝えたい!」というときに、役立つ型と言えるでしょう。
PREP法の大まかな流れは「最初に結論を述べる→その裏づけになる理由・根拠を示す→最後に同じ結論で締めくくる」というもの。つまり「理由・根拠」などの詳細情報を、「結論」でサンドするような構成です。
たとえばPREP法で「NFT」を説明すると、以下のようになります。
NFTとは情報管理技術(ブロックチェーン)により唯一無二性を保証された「一点物のデジタルデータ」のこと。(P:結論)
NFTが広まった理由は、デジタルアートなどの稀少価値を確保できる点にある。どのデータが「本物」であるか証明できれば、いくらコピーされたとしても、オリジナルデータがもつ価値が損なわれることはない。このNFTが可能になったのは、暗号技術が発達し、データの作者・所有者・取引履歴などを保証できる環境が整ったためだった。(R:理由)
有名な事例のひとつは「世界初のTwitter投稿」が291万ドルで落札されたというもの。Twitterの共同創業者ジャック・ドーシー氏による「just setting up my twttr」というツイートが、ネット上のオークションで取引された。コピーではない「本物」のお墨つきがあるツイートは、この世にただひとつしか存在しない。だからこそ破格の値段がついた。(E:実例)
このようにNFTの登場によって、あるデジタルデータが「本物」であることを証明し、現実の物体やアート作品と同じように、唯一無二の価値を与えることが可能になったのだ。(P:結論)
P→R→E→Pの構成で説明することで、「NFT」という言葉の概要を簡潔にまとめることができました。なお、ほかに記述したい補足情報がある場合は、「E」のあとなどに加えるといいでしょう。
「説明ってどうやるんだろう……?」と迷ったとき、ぜひこのPREP法を思い出してください。
勉強に使える説明の型2「時系列法」
時間や順序に関わる知識を勉強しているなら、情報を時間の流れの順に記述する「時系列法」を用いてはいかがでしょうか。
たとえば、
- 資格の勉強で、取引の流れを頭に入れたい
- 経済学の勉強で、お金の動き方を整理したい
- ある物事や出来事の成立背景を整理したい
- 日本史や世界史の知識をまとめたい
といったシーンでは時系列法が適しています。勉強の内容により、「時間や順序が関わるものは時系列法、それ以外のものはPREP法」という具合に使い分けるのもよいでしょう。
私たちが行なう勉強の場合、問題解決策を考えるというよりは、シンプルに「物事の背景や、現時点での課題について知る」ことがメインとなることが多いもの。学んだことを簡潔に時系列で説明するだけでも、意味があると言えそうです。
そこで、NFTについて学んだことを以下のように説明してみました。冒頭に、最も重要な情報や核となる情報(結論)を述べ、その後時系列でNFTの成立背景を説明しています。つまり「結論 → 過去~未来」という構成です。
NFTとは、情報管理技術(ブロックチェーン)により唯一無二性を保証された「一点物のデジタルデータ」のこと。(結論)
従来、あるデジタルデータが「唯一無二」であることを証明するのは不可能なことだった。デジタルデータは容易にコピー可能であるうえ、その「コピー」と「本物」とを区別する手段がなかったからだ。(時点1:従来)
しかし近年、情報技術の発達により、デジタルデータの作者・所有者・取引履歴などを記録し、唯一無二性を証明できるようになった。(時点2:近年)
最近の事例では「世界初のTwitter投稿」が291万ドルで落札されたことが話題になった。Twitterの共同創業者ジャック・ドーシー氏による「just setting up my twttr」というツイートが、ネット上のオークションで取引されたのだ。コピーではない「本物」のお墨つきがあるツイートは、この世にただひとつしか存在しない。だからこそ破格の値段がついた。(時点3:最近)
いまや手軽にNFTアートなどを出品できる環境が整いつつあり、今後、NFT市場はますます拡大していくものと予測される。その一方では、著作権や税制などのルールをいち早く整備する必要にも迫られている。(時点4:いま~今後)
時間・順序が関係する知識を勉強するときは、上記のような要領で説明しながら覚えていきましょう。
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勉強の質を高めたい。勉強したことをしっかり覚えたい。そんな方はぜひ「説明上手」になることを目指してくださいね。