資格勉強に欠かせないもののひとつが「暗記」です。参考書を読んで内容を理解することはできても、その内容をどんどん忘れてしまっては、資格試験合格は遠のくことになります。
そこで、「共通化」「区別化」をキーワードに挙げます。
複数の事柄のなかにある、共通点に注目
「人間は忘れる生き物」という言葉もありますが、一度覚えたことも時間の経過とともに忘れていくのが、私たち人間の特徴です。
しかし、どんなことも同じように忘れていくわけではありません。ランダムな数字の並びといったものなら、それこそ時間とともにどんどん忘れていきますが、きちんとロジックをもって理解したものについては忘れにくいのです。
そして、そのロジックをもって理解するために重要なものが、「共通化」「区別化」の視点になります。まずは共通化から解説しましょう。
英単語を覚えるケースを例に挙げてみます。英単語のなかには、「replay」「return」「remake」といった、「re」という接頭辞がついたものがたくさんあります。それぞれの意味は、「再生する・再試合をする・再演をする」「戻る・再び起こる・再来する・再発する」「つくり直す・再映画化する」です。
これらの意味を眺めていれば、「『re』は『再び』という意味を表す」ことに気づけるでしょう。そうして、「re」という接頭辞のある単語には、なんらかの「再び」の意味が潜んでいるという共通点を認識できます。これこそが共通化であり、その共通点の認識が、記憶の強化を果たしてくれるのです。
また、この共通化によって、たとえ初めて見る単語であっても、「これは『re』がつくから、『再び〜する』という意味だろう」と推測できるようになるメリットも生まれます。
共通点をもつもののあいだにある、異なる点を意識
一方の区別化は、共通化の派生形と言っていいかもしれません。法律の世界の話で少しわかりにくいかもしれませんが、訴訟のなかには「民事訴訟」と「刑事訴訟」という異なる種類のものがあります。
どちらも、正しい裁判を実現するために、当事者が望めば原則的に3回までの審理を受けられる「三審制」が採用されています。つまり、民事訴訟と刑事訴訟についてはまずどちらも訴訟であり、そして三審制が採用されている点は共通していますから、共通化を活かして記憶を強化することができるのです。
ただ、じつは民事訴訟と刑事訴訟では、取り扱う事件内容などのほか、たとえば控訴の手続きも微妙に異なります。ここで詳細に触れることは避けますが、そのように共通していることのなかにも「ここは違う!」という点を意識することが区別化であり、共通化と同じように記憶を強化してくれるものなのです。
先に、区別化は共通化の派生形と言いましたが、「共通化と区別化は表裏一体」が正しい表現かもしれません。いっさいの共通点がないふたつの事柄の場合、それぞれがもつ要素はすべて区別することになります。共通する部分があるからこそ異なる部分が際立ち、それらを認識することで両方の事柄を頭にしっかりと入れることができるのです。
記憶を強化するための「イメージ」の活用
それから、共通化と区別化にも通じることですが、しっかりと暗記をするためには、やはり丸暗記はあまりおすすめできません。共通化や区別化を使って「理解」を先行させてこそ、記憶は強化されるのです。
そして、理解を助けるためには、「イメージ」を活用することも考えてみましょう。
私たちは、誰かから聞いた話より、実際に自分で体験したことのほうがよく覚えています。なぜなら、誰かから話を聞いたことで生まれるイメージよりも、自分で体験したことによるイメージはより強いものだからです。
つまり、何かを暗記するときには、丸暗記ではなく覚える内容についてなんらかのイメージをともなわせることが、大きなコツとなります。たとえば、暗記の常套手段である語呂合わせは、まさにイメージをともなわせる手法のひとつです。
有名なところを例に挙げれば、奈良に平城京ができた710年という年号を覚えるための「なんと(710)大きな平城京」という語呂合わせがあります。この語呂合わせを知れば、広大な平城京を前に多くの人が驚いているようなイメージをもつことができますから、しっかりと年号を覚えられるでしょう。
イメージを活用する意味では、YouTubeなど動画共有サイトを活用するのもいいかもしれませんね。記憶したいことを動画共有サイトで検索して動画を見るのです。もちろん、単純に内容を知るには文字で読むほうが時間はかかりません。でも、記憶を強化する意味では、動画によるイメージをともなわせるほうが賢明だと言えるでしょう。