勉強の質が高まる「マインドマップ」と「プレマップ&ポストマップ」。上手な活用法を考えてみた

何時間も勉強しているのに記憶に残らない……。今回は、そんな方にぴったりの勉強法「マインドマップ」と「プレマップ&ポストマップ」をご紹介します。実際に筆者が勉強に活用しながら、両者の違いについて掘り下げてみました。

何度勉強しても定着しないのはなぜ?

何度勉強しても記憶が定着しないのは、物事の「つながり」を理解できていないからかもしれません。よりよく記憶するためには「関連性を考えること」が必要です。

つまり、教科書にある情報をひとつひとつ、ただ単に書き写すのではなく、自分の頭で「これとこれはどんなつながりがあるだろうか?」と思考をめぐらすことが大切なのです。

「プレマップ&ポストマップ」と「マインドマップ」あなたに向いているのはどっち?02

 

「マインドマップ」とは?

マインドマップとは、イギリスの心理学者で教育コンサルタントのトニー・ブザン氏が、1960年代に発案したノート術のこと。記憶力や発想力を高めるメソッドとして知られています。

マインドマップとは「放射思考を反映したノート法」。放射思考とは、連想をするときの自然な思考の流れのことです。図にすると、樹状形(樹を下から見上げたような形)になります。

この樹状形が取り入れられたマインドマップでは、思考の流れをそのまま図に落とし込めるようになっています。普通のノート術では、情報が断片的になってしまいがちですが、マインドマップを用いれば「連想する感覚で」つながりを図解化することが可能。その結果、自然に情報どうしに関連性をもたせながら学べるのです。

イギリスのエクセター大学のポール・ファーランド氏らの実験では、マインドマップを使って勉強をすることで知識量が10〜15%増えるという結果が出ています。

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さて、先述した「マインドマップの学校」ウェブサイトによると、書き方は以下のとおり。

  1. テーマを用紙のセンターに書く(セントラルテーマ)
  2. テーマから曲線を伸ばし、メインブランチをつくる
  3. メインブランチの上に小テーマを書く
  4. メインブランチからサブブランチを伸ばし、キーワードを乗せる
  5. ひとつのブランチにつきひとつのキーワードを乗せる
  6. なるべくカラーとイラストを使う

簡単に言うと、セントラルテーマのまわりに情報を放射状に書き込んでいくということ。のちほど、筆者が実際につくったものをお見せしますので、詳しい書き方はそちらをご覧ください。

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「プレマップ&ポストマップ」とは?

続いてご紹介するのは「プレマップ&ポストマップ」というノート術です。

「プレマップ&ポストマップ」とは、“独学の達人” 読書猿氏が、ベストセラー『独学大全 絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法』で提唱している独学術のひとつ。もともと教育現場にも取り入れられている「コンセプトマップ」という図解法を発展させた学習法です。

プレマップおよびポストマップの書き方自体は、コンセプトマップと同じ。

  1. テーマを書く
  2. テーマに関連する言葉や概念を階層状に書き出す
  3. キーワードどうしを矢印や線でつなぐ
  4. 線や矢印の上に、関係を表す言葉「リンクラベル」を乗せる

線でつなぐという点でマインドマップにも似ていますが、リンクラベルの存在が特徴的です。読書猿氏によると、「線で結び、情報どうしの関係を言語化する」という手順が、記憶をさらに深くするのだとか。

そして、プレマップ&ポストマップを用いて勉強する際は、以下の独特な手順を踏みます。

  1. 「勉強前」に「資料を参照しない」で「プレマップ」をつくる
    →既存の知識をマップ化
  2. 「勉強前」に「資料を参照しながら」「プレマップ」をつくる
    →資料の目次を見ながら、情報をマップ化
  3. 「勉強後」に「資料を参照しない」で「ポストマップ」をつくる
    →資料なしで、学んだことをマップ化
  4. 「勉強後」に「資料を参照しながら」「ポストマップ」をつくる
    →資料を見ながら、学んだことをマップ化

つまり、学習の前後に資料の参照なし/ありで計4回マップをつくるのです。

読書猿氏によると、知識を自分のものにするためには、「すでに知っていること」を洗い出し、そのうえで「新しい知識」をつなげていくという作業が有効なのだとか。

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「マインドマップ」で勉強してみた

では「マインドマップ」から実践してみます。必要なのはこちらのツール。

  • 資料
  • 無地のノート
  • カラーペン、色鉛筆など

資料に関しては、筆者は『日本の歴史をよみなおす』(ちくま学芸文庫)の「縄文文化」という章を選びました。2〜3ページほどの短い章です。

ノートを横置きにして、マインドマップの作成開始。まず、紙の中央にセントラルテーマを置きます。今回はそのまま「縄文文化」としました。

資料を読みながら、カテゴリーになりそうなキーワードに出会ったら、つどメインブランチを伸ばしていきます。メインブランチからさらに放射状に曲線を伸ばし、細かい情報をサブブランチに乗せていきます。

なるべくメインブランチごとにカラー分けをし、重要ポイントはイラストも加えました。できあがったマインドマップはこちら。

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マインドマップで「縄文文化」を勉強

カラフルで曲線的で、いかにもイメージ記憶を刺激するものになりましたね。

ブランチに乗せるキーワードを短い言葉で表現する作業によって、大切な情報をピックアップする力が鍛えられると実感。さらに、関連するものどうしをブランチでつなげることで、情報の位置づけや重要度をどんどん整理することもできました。

肝心の「記憶に定着するか?」という点に関しては「効果あり」! 勉強したことをあとから思い起こしたときに、マップの全体像が「ひとつの絵」として頭に浮かぶので、どんな情報があったかを瞬時に思い出すことができたのです。数日たっても効果は薄れず、大きなキーワードはもちろん、サブブランチに書いた情報まで記憶に残っていましたよ。

「プレマップ&ポストマップ」で勉強してみた

次に、「プレマップ&ポストマップ」で勉強してみます。先ほどの「縄文文化」の次の「弥生文化」の章を資料として選びました。プレマップ&ポストマップでは書き方にルールはないので、用意するものは手持ちの紙とペンだけでかまいません。

まずは、プレマップ(参照なし)を書きました。資料を見ずに、すでに知っていることを書いていきます。筆者の場合は知識が浅く、このようなプレマップになりました。

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プレマップ(参照なし)

次に、プレマップ(参照あり)をつくります。本来は目次を参照しますが、今回は本のなかの1章なので、目次がありません。そこで、さらっと読み流してからつくることにしました。できあがったのがこちら。少し情報量がしっかりしてきましたね。

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プレマップ(参照あり)

次につくるのはポストマップ(参照なし)。資料をじっくり読み込んでひととおり勉強してから、資料を見ないでマップを書きました。しだいにキーワードが増えていくのがわかりますね。

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ポストマップ(参照なし)

最後はポストマップ(参照あり)。資料を読みながら、情報に漏れがないように詳細を書き込んでいきます。かなり情報が充実してきましたよね。

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ポストマップ(参照あり)

プレマップとポストマップを実際につくってみて思ったのは、「大変だけどやりがいがある」ということ。関連性をじっくり考え、言語化するのは時間がかかりますが、結果として細かい情報もしっかり記憶に根づきました。あとから思い出す際は「いつ?」「どこで?」といったリンクラベルを思い浮かべることで、関連する情報がずらっと脳内に呼び起こされましたよ。

同じ資料を何度も見返す必要があるので、勉強が苦手な筆者としては若干のハードルを感じましたが、マップが完成していくにつれて楽しく感じられるようになりました。

あなたに向いているのはどっち?

さて、ふたつのノート術を試してみてわかったのは、「見た目は似ているけど全然違う!」ということ。

マインドマップは見た目も描き方も感覚的。記憶に残りやすいとはいえ、用語ひとつひとつの定義までを完璧に記憶できるわけではないと感じました。その代わりに、情報の大筋をつかむことや、自分の言葉で説明できるようになるといったことに、効果を発揮してくれると思います。

マインドマップが向いていると思われるのは、とにかく勉強を楽しみたい人。「まずは楽しく大枠をつかみたい」「全体像を把握したい」というときにはマインドマップがおすすめです。あまりに複雑な情報をマインドマップで表すと、かえって煩雑になってしまうと感じましたので、さほど込み入っていない内容の勉強には適しているかもしれません。

プレマップ&ポストマップは、その手順からわかる通り、よく考えて記憶することが目的。つながりを言語化しながら何度も繰り返しつくることで、知識をしっかり頭に入れていくことができます。手順が多いので大変ではありますが、やみくもに勉強するよりずっと成果を感じられますよ。

プレマップ&ポストマップがおすすめなのは、複雑な内容を勉強したい人。分析が得意な人には、なお向いているでしょう。「情報量が多くてどこから手をつけたらいいかわからない」「試験のためにしっかり記憶したい」というようなときにもおすすめですよ。

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どちらのテクニックも、勉強の質を上げてくれました。ご自身に合いそうなものをぜひ試してみてくださいね!

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