「仕事のメールで、相手にいい印象を与えたい。でもいつも同じような文章になってしまう……」
「顧客向けに資料をつくったのに、なかなか納得してもらえなかった……」
そんな方へ、文章が上手に仕上がるフレーズを4つご紹介します。ほんのひとこと加えるだけで、あなたの文章はもっと印象よく、そして説得力のあるものになるはずですよ。
1. 数字
取引先へメールを送ったら、意図が伝わらず誤解されてしまった――こうした経験があるなら、あなたが送ったメールには「数字」が足りなかったのかもしれません。
文章に具体的な数字を入れると、誰に対しても同じニュアンスが伝わる
たとえば、こちらの文章を見てください。
この商品は、若い女性に人気です。
一見問題ないようにも見えますが、「若い」のラインは人それぞれ。書き手は10代をイメージしていたのに、読み手は20代をイメージした……なんて齟齬が起きかねません。つまり、「形容詞」は “伝わらない” 言葉なのです。
形容詞を使わず数字を使うことをすすめます。
この商品は、20代の女性に人気です。
これなら誤解は生じませんね。
数字は、ビジネス文章を構成する3要素――事実・数字・エピソード――の1つ。わかりやすい文章を書くにはこの3つさえあれば十分なので、最適な形容詞や気の利いたフレーズを考えて時間を費やす必要はありません。
ですから、メールを送ったり書類を提出したりする前には、形容詞を使っていないかチェックして、数字に置き換える癖をつけましょう。
NG:弊社のシステムを導入していただければ、残業を少なくできます。
OK:弊社のシステムを導入していただいた結果、残業を前年度比で30%減らせた実績があります。
NG:なるべく早く、見積りをお送りします。
OK:明後日の7月10日に、見積りをお送りします。
曖昧な表現を数字に書き換えるだけで、文章はブラッシュアップできるのです。
2.「たとえば」
取引先に、困り事がないか尋ねるメールを送ったけれど、なかなか答えてくれない――こんなとき、もしかすると相手は、どんなことを答えればいいのかピンと来ていないのかもしれません。
そこでぜひ使いたいのが「たとえば」というフレーズです。
「たとえば」は、文章がうまい人ほど使いこなしている表現のひとつ。書き手の意図が明確になり、文章の説得力が増すうえ、読み手の理解度を高める効果もあるそうです。
例文で確かめてみましょう。
組織の課題をお聞かせください。
この文章は短くてシンプルなぶん、「売上のことを言えばいいのか、人材の悩みを答えればいいのか……」と読み手を迷わせる可能性大。そこで「たとえば」を加えます。
組織の課題をお聞かせください。たとえば、20代社員の離職率が上がり続けているといったような人材面でのお困り事を教えていただけますと幸いです。
なお、「たとえば」のあとに具体例を加えるときは、「読者が頭のなかで映像を思い浮かべられる」レベルを目標にするのがポイントだそう。
NG:PRの方法を変えるべきだと考えます。
NG:PRの方法を変えるべきだと考えます。たとえば、SNSへの投稿を増やして若い世代にアプローチするという案があります。
OK:PRの方法を変えるべきだと考えます。たとえば、簡単なダンスを取り入れた動画が10代の若者に人気なので、SNSを通じてこうしたPRコンテンツを拡散するという案があります。
SNSの投稿の内容も、何歳くらいの人にアプローチするのかも伝えていない2つめの文章に比べて、「簡単なダンスを取り入れた動画」「10代の若者」という具体例が加わった3つめの文章のほうが、格段にイメージが浮かびやすいはずです。
「たとえば」を上手に使って、「なるほど、そういうことか!」と相手を納得させる文章を目指しましょう。
3.「幸いです」
「用件を簡潔に伝えることが大切」だと考えてメールを送っていたら、CCに入れていた上司から「ちょっとメールの印象がよくないんじゃない?」と指摘された――そんな状況は、あるひとことを加えるだけで改善するかもしれません。
それは「幸いです」という表現。特に、メールでお願いや催促をするときに適しています。
「幸いです」には、「○○してくれると(私は)嬉しいです」という意味合いがあるそう。「○○をお願いします」とシンプルに書くよりも、丁寧で柔らかい印象を与えられると言います。
具体例を見てみましょう。
NG:1週間以内に、データの送付をお願いします。
OK:1週間以内に、データをお送りいただけますと幸いです。
文末を工夫するだけで、そっけない印象がなくなりますよね。
「幸いです」の効果は、心理学の観点からも説明できます。「幸いです」に込められた「○○してくれると、私は嬉しいです」という意図は、自分が主語であることから「アイ(I)メッセージ」と呼ばれます。反対に「(あなたは)○○をやってください」といった表現は「ユー(YOU)メッセージ」です。
アイメッセージを使うと、意思をソフトに伝えられるだけでなく、「お願いされている」と相手に感じさせることができるそう。「頼られているから応えてあげよう」という具合に、相手の行動を促す効果も期待できるのだとか。
うまい文章が書けて、相手にも気持ちよく動いてもらえるなら一石二鳥ですね。目上の人にメールを送るなら「幸甚です」や「幸いに存じます」という言い回しもおすすめ。
4. クッション言葉
「今日中に返信ください」「データを準備してください」そんなメールが届くたび、どうしてこうも命令口調なのかとモヤモヤする――そんな方は、そのままご自身にも当てはめてみてください。あなたのメールは、“一方的な文章” になってしまっていませんか?
大切なのは、「クッション言葉」を活用すること。依頼や反論、指摘などをする際の “前置き” のことです。
「こうしてほしい」「依頼を断りたい」といった本題に入る前にひとこと添えると、相手を敬う気持ちや気遣いが伝わりやすくなり、好印象を与えられるのだそう。
書き言葉は話し言葉に比べ、冷たい印象を与えやすいもの。文字だけだと、書き手の “温度感” が伝わりにくいからです。
たとえば、スケジュールの相談をしていて、相手が提案した日程に先約が入っていたとします。「その日は先約が入っていて……」と口で言えば、こちらの言いづらそうな雰囲気や申し訳なさそうな声音も相手に伝わるはず。相手も、快く別の日程を考えてくれるでしょう。
ところがメールで「その日は先約が入っております」とだけ送ると、こちらがどんなに「申し訳ない」と思っていても伝わりません。「一方的だ」「冷たすぎる」という印象を与え、相手の機嫌を損ねてしまう可能性も。
そこでクッション言葉を使うと、こうなります。
NG:その日は先約が入っております。
OK:申し訳ございませんが、その日は先約が入っております。
ひとこと加えるだけで、相手への気遣いが伝わる文章になりましたね。
このほかにも、依頼をするときは「お忙しいところ恐縮ですが」、断るときや意見するときは「誠に申し上げにくいのですが」など、クッション言葉にはさまざまなレパートリーがあります。印象のよい文章を書けるよう、いくつかストックしておきましょう。
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ビジネス文書やメールの文章は、ひとこと加えるだけでワンランクアップさせることができます。ぜひ、今回ご紹介した言葉を使ってみてください。