「文章をうまく書くには、やっぱり訓練が必要……? でも面倒なことはしたくない」
「難しいことや特別なことをしなくても、文章力がアップする方法を知りたい!」
このような人に向けて、うまい文章をラクに書くための “ちょっとしたコツ” を5つご紹介します。メール、チャット、報告書など、あらゆるビジネスシーンで使えるものを集めました。誰でも簡単に実践できますから、読んだら “即” 使ってみましょう。
1. 一文を「短くする」だけ
仕事の情報は複雑で、文章にするとどうしても込み入ってしまうもの。もっとスマートに書きたいのに……と思うなら、「一文を短くするだけ」で効果的です。
数々のヒット作を生み出すコピーライターで、“端的に文章を書くプロ” である橋口幸生氏。同氏は、読みやすい文章を書くには、一文を40~60字以内にまで短くするとよいと言います。
これは、一文に書く内容をひとつに絞ると実現できるとのこと。このテクニックは「一文一意」と呼ばれ、文章を書くときの基本なのだそうです。以下の例を比べてみましょう。
【NG例】一文に複数の内容を詰め込んだ長い文章
明日の勉強会ですが、冒頭でレジュメをお配りする予定なので、参加者のみなさんは筆記用具だけをお持ちのうえ、15時に会議室にお集まりください。
【OK例】一文一意を守った短い文章
明日の勉強会は、冒頭にレジュメをお配りします。
持ち物は筆記用具のみです。
15時に会議室にお集まりください。
橋口氏によると、接続語を増やすと一文一意を守れなくなるそう。NG例では3つの接続語(〜ですが、〜なので、〜のうえ)を使っているのに対し、OK例では接続語を使用していません。
また、読点(、)が多いと一文一意になっていない可能性があるとのこと。接続語や読点の数を意識しつつ、一文一意の短い文章を書くように心がけてくださいね。
2.「素直に謝る」だけ
取引先に、謝罪のメールを送らなければならないとき。直接的な表現で伝えることがためらわれて、「ご相談させてください」などとぼかして謝罪していませんか?
そんな遠まわしな謝罪では、かえって意図が伝わらず、相手に誤解を与える恐れもある――そう橋口氏は指摘します。
望ましいのは、「誠に申し訳ありません」と簡潔に謝罪すること。それだけで、文章は格段に読みやすくなり、意図を正しく伝えられるそうです。以下の例で違いを確認しましょう。
【NG例】まわりくどい謝罪文
先日の件ですが、その後上長と打ち合わせいたしましたところ、予算について懸念点があり、貴社のご期待に添えない結果となりそうです。担当者である私としては、なんとかご要望にお応えしたいと考えているものの、今後の進め方について、あらためてご相談させていただけますと幸いです。
【OK例】簡潔な謝罪文
誠に申し訳ありません。先日の件、予算面で上長の了承を得られませんでした。
NG例では、「もう一度相談したらいけるかも」という誤解を招きそうですよね。言い訳を述べたり、無念さをにじませたりするよりも、シンプルにひとことで謝罪するほうが、明らかにわかりやすいもの。
橋口氏によれば、「誠に申し訳ありません」というワードは、真摯さも伝えられるそう。あれこれ理由を並べたくなるものですが、結局のところ結論が変わらないのなら、素直に謝るだけでよいということです。
3. シンプルに「します」と書くだけ
「のちほどご連絡させていただきます」「検討させていただきます」――丁寧に書こうとするあまり、「させていただく」を頻繁に使っていませんか? じつは、メールやチャットでのやり取りでは、「です」「ます」など丁寧語を使えば十分ですよ。
一般社団法人日本ビジネスメール協会代表理事の平野友朗氏によると、「させていただく」ばかりの文章は、相手に読みづらい印象を与えるのだそう。文章は、へりくだりすぎると長くなるもの。その典型例が、「させていただく」を多用する文章だと言います。
短くて読みやすい文章にするには、過剰な謙遜表現をカットして丁寧語に置き換えるだけでいいとのこと。例で比べてみます。
【NG例】「させていただく」が多い文章
ご指摘いただいた点をふまえ、再検討させていただきます。改めてご連絡させていただきますので、何とぞよろしくお願いいたします。
【OK例】「します」だけ使った文章
ご指摘の点をふまえて再検討します。改めてご連絡しますので、よろしくお願いします。
状況によっては「させていただく」が必要な場面もあるでしょう。ですが、丁寧語で十分な場面は案外多いはず。書いた文章を読み返して「へりくだりすぎだな」と思ったら、丁寧語に変えてみるといいかもしれませんよ。
4.「なくせる言葉」をなくすだけ
「基本的に」「原則として」「本質的に」「根本的に」「ある意味」――こうした言葉を、ただなんとなく使いがちなあなた。少し考えて、もし特に使う理由がないと気づいたら、思いきってカットしましょう。
伝える力【話す・書く】研究所所長で、文章スキルについて執筆・講演を行なう山口拓朗氏は、上に挙げた言葉はどれも「意味があるように見えて、じつはない言葉」だと断言します。
意味がないどころか、はぐらかされた印象を読み手に抱かせる恐れもあるとのこと。不快感や不信感にもつながりかねないそうです。では、例を読み比べてみましょう。
【NG例】意味のない言葉を使った文章
基本的には、そのやり方で進めてもらって大丈夫です。
【OK例】意味のない言葉をカットした文章
そのやり方で進めてください。
NG例の場合、読み手を「このやり方で本当に大丈夫なのかな」と不安な気持ちにさせる可能性があります。そのような文章を “うまい文章” とは言いがたいですよね。とはいえ、例外が存在するケースでは、「ただし……」と続けて例外を記載すれば問題ありません。
「基本的に」「原則として」「本質的に」「根本的に」「ある意味」を使ったときは、本当に必要な言葉なのかを考えましょう。使わなくてもいいならカットするのが正解です。
5.「Q&A方式」で書くだけ
「大事なことを確実に伝えたいなら、Q&A方式で文章を書くとよい」――こう指摘するのは、コラムニスト・コミュニケーションコンサルタントのひきたよしあき氏。相手がきっと抱くであろう疑問を想定し、それに答えながら文を書くのです。
Q&A方式には、人がつい読みたくなる魅力があるとひきた氏。問いを立てられると、人は自然と「えっ、なんでだろう?」と一瞬立ち止まって考えるもの。そんな、「読み手に頭を使わせる」工夫が、こちらの伝えたいことを確実に届けるのに効くそうです。
社内の報告書で「顧客満足度が下がった理由」を説明する想定で、以下の文章を読み比べてみてください。
【NG例】Q&Aを使わない文章
スピード面で顧客の期待に応えられず、顧客満足度が下がってしまった。
【OK例】Q&Aを取り入れた文章
なぜ、顧客満足度が下がってしまったのか。それはスピード面で顧客の期待に応えられなかったからである。
いまあなたも、OK例を読んで「なぜ下がったのだろう」と一瞬考えませんでしたか? その流れで、するすると次の文まで読んだはずです。
このように「なぜだろう」と相手に考えさせれば、自然と読者をひきつけることができます。企画書や報告書を書くときに使えそうですね。
***
特別なトレーニングをしなくても、「たったこれだけ?」というような小さな工夫によって、あなたの文章はぐっとよいものになります。実践すれば、あなたも「文章を書くのがうまい人」になれるはず! ぜひ試してみてくださいね。