【科学が証明】行動力が自然と右肩上がりになる3つの方法。やっぱり “書く” のが最強だった

「私にはまったく行動力がない」とお考えですか? それはきっと間違った思い込みです。行動力を高める術を、まだ知らないだけではないでしょうか。あなたの行動力が自然と右肩上がりになる、科学に裏打ちされた実践法を3つ紹介します。

【方法1】あえて夢と現実のギャップを脳に知らせる

ドミニカン大学カリフォルニア校の心理学教授であるゲイル・マシューズ氏は、こんな実験を行なったそうです。

<マシューズ氏の実験(2007年発表)>

267人の参加者を5グループに分け、以下を実践してもらう

  • 4週間以内に達成したい目標を立てる⇒行動⇒本人が進捗状況と目標達成度を評価

<各グループの条件>

  • グループ1:目標について考える
  • グループ2:目標を書き出す
  • グループ3:目標を書き出し、行動方針を決める
  • グループ4:目標を書き出し、行動方針を決めて、友人と共有する
  • グループ5:目標を書き出し、行動方針を決めて友人と共有し、週ごとの進捗レポートも友人に送る

結果は次のとおりでした。

マシューズ氏の実験、分析1のグラフ

上のグラフを見ると、最も目標達成率が高かったのはグループ5であることがわかります。しかし、ここで注目すべきは、目標を書かずに考えただけの「グループ1」よりも、目標を紙に書き出した「グループ2」のほうが大きく上回っていること。頭のなかのものを書き出すだけで、こんなに差が出るのですね。

追加の分析では、「書かなかったグループ1」よりも、「書いたグループ2〜5」を合わせた目標達成率のほうが、大幅に高いこともわかったそうです。

マシューズ氏の実験、分析2

これには脳内メカニズムが関わっている可能性があります。

脳内メカニズム「RAS」の働き

私たちの脳にはRAS(Reticular Activating System/網様体賦活系)と呼ばれる仕組みがあるそうです。九州大学大学院医学研究院 精神病態医学(※2016年11月時点)の本村啓介氏によると、RASは覚醒状態を維持する脳内メカニズムなのだとか(脳科学辞典より)

ワシントン大学など複数の大学で教鞭をとった経験をもつヘンリエッタ・アン・クロウザー氏は、このRASが「自分の夢」を紙に書き出すと作動し、それにより注意力や集中力が増すと説明しています。そのとき脳は “夢をつかむ自分” を見ようと、いつもよりたくさん働くのだとか。

具体的な目標がインプットされると、それが「潜在意識のなかの現実」となり、「目の前にある現状」とのあいだにギャップが生まれ、そのギャップが目標実現に向かうパワーとなる。

つまり、書けば脳が「実現したいこと」と「現状」とのギャップを認識し、それを埋めるためにフル回転するということ。たとえば部屋が散らかっているとき「きれいな部屋でリラックスする」と紙に書けば、脳がギャップを埋めるため、私たちに行動を起こさせるわけです。

 

【方法2】最初のハードルは極限まで下げる 

心理学者のアルバート・バンデューラ氏は、“行動を起こして成果を出すまでのあいだ” に、“うまくやり遂げられそうだ” という期待感(効力感期待)と、“いい結果を出せそうだ” という期待感(成果期待)が存在すると考え、それらを「自己効力感(セルフ・エフィカシー)」と名づけました。

自己効力感の図解

つまり、自己効力感が高ければ、このステップをスムーズに踏める――いわゆる自信をもって積極的に行動できるわけです。自己効力感を生み出す源として次の4つがあります。

  1. 実際に成功を体験して「やればできる」感覚を強める
  2. うまくいっている人を観察して「自分にもできそう」といった感覚を得る
  3. 自他からの励ましや説明で「やればできる」という感覚を得る
  4. 自分の体調や気分を意識して「できる」感覚につなげる

番号が若いものほど影響力が大きく、自己効力感を高める一番の方法は、どんなに小さいことでも成功体験を重ねることだとされています。

最初の1歩のハードルを極限まで下げる「10秒アクション」が参考になるはずです。たとえば「毎日30分は本を読もう」と心に決めても、時間がない、疲れていると、なかなか行動に移せないとき、行動を起こす最初の10秒で何ができるか、具体的な行動を考えてみるのです。

読書であれば、「まず本を出す」「(読書のお供のコーヒーを淹れるために)お湯を沸かす」といったところでしょうか。これなら、どんなに時間がなくても、どんなに疲れていても、確実に最初の1歩を踏み出せるはず。

1歩を踏み出してからもハードルの低いチャレンジを何度も繰り返せば、成功体験が増えて自己効力感が高まり、最終的な目標にもどんどん近づけるのではないでしょうか。

スモールステップを重ね、最終目標に近づきつつあるビジネスパーソン

脳は生命を守るために現状維持を好む一方で、ほんの少しずつなら変化を受け入れるとのこと。だから、この方法は脳の仕組みに適っているそうです。

「10秒アクション」にならうもよし、気になっていることや保留中のことなど、確実に今日中で終えられそうなことだけを書いて実行し、日々達成感を味わうのもよしです。

かなりハードルを下げた目標設定の例:今日中にできること

【方法3】トレーニングで全体観を成長させる

「全体観」があれば物事の判断・行動が早くなる

たとえば接客、販売という仕事への全体観をもつアパレルショップのベテラン店員さんには、客がどんな質問や要望を出すのか、それにどう対応すべきか、どんな問題が生じうるか見えているのだとか。つまり「全体観をもつ」とは、物事の全体を把握でき、予測でき、やるべきことを判断できるということ。

人間にはもともと、行動を迅速かつ正確に行なうために予測する能力があるそうです。交差点で人と衝突せずに進めるのも、「あの人はこう進む」「そっちの人はこの速度でこう進む」といった予測能力があるから。また、予測にともない増大する脳波のSPN(Stimulus-Preceding Negativity/刺激先行陰性電位)は、いい結果への期待や、金銭報酬への期待でも増大するとのこと。

こうして見ると、人間の行動を迅速かつ正確に行なうための「予測する能力」は、前項の「自己効力感」にも、先述の「全体観をもつこと(物事の全体を把握でき、予測でき、やるべきことを判断できる)」にも通じています。私たちに行動力の基盤があると、十分に示しているのではないでしょうか。

ならばそれを成長させるのみです。全体観を養成するふたつのトレーニングを紹介しましょう。

全体観トレーニング1「オプション」

選択を意味する「オプション」という名の全体観養成トレーニングは、何かを決める際に、選択肢を書き出すといった、非常にシンプルなものです。今日のランチに何を食べるかといったことから、ビジネスにおける重大な決定まで、幅広く使えるツールでもあるとのこと。

「オプション」のトレーニング例

ランチに何を食べるか、頭のなかにある選択肢を書き出してみた「オプション」の例。決断速度を上げながら全体観を養成できる。

全体観トレーニング2「フレームワーク」

もうひとつの全体観トレーニング「フレームワーク」とは、いわゆる物事を整理する枠組みのこと。たとえば仕事の優先順位を最もシンプルな「フレームワーク」に落とし込むと、次のような2x2の枠組みになります。ほかにも問題点の切り分けや、顧客タイプの分類、アイデアの整理などでも活用できるとのこと。

 全体観トレーニング「フレームワーク」の例

最もシンプルな「フレームワーク」例。タスク管理をしながら全体観を養成。

 

これらのトレーニングは全体観を育てるだけでなく、それぞれが即断即決・即実行のためのツールとしても使えるそうです。

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