ポーズを分解して練習しよう
「ヨガポーズ分解法」では、外からの負荷と徐々に強度を高める運動を取り入れることによって、ストレッチと筋力強化を少しずつ深めながら、ひとつのポーズに要求される力がつくように体を整えていく。このヨガでは、難しいポーズを頑張って「完成」しようとせずに、動きのほうを自分の体に合わせて変えていこう。
このヨガのクラスでは、科学的知見に基づいた4つの方針を通じてポーズに必要な力と安定性を高めていく。
1⃣ 前の段階に戻す
こうすることによってアライメントを保ちやすくする。重力に対する向きを変えるか(たとえば戦士のポーズⅢであれば、左右どちらかの側を下にして横になって行う)、てこの作用のてこの長さを短くすることによって(舟のポーズであれば膝を曲げて行う)、ポーズをひとつ前の段階に戻すことができる。
2⃣ 一段階進める
外から負荷や重さを加えるか(戦士のポーズⅢであれば、ボルスターを持って行う)、てこの長さ、つまり四肢の長さを長くすることによって(舟のポーズであれば膝を伸ばしてポーズに入る)、アライメントを保つのを難しくする。
3⃣ 見た目ではなく自分の内側で起きていることに意識を向ける
クラスでは「膝を足首の真上にもっていきましょう」ではなく、「膝を足の小指のほうに傾けていき、それからマットの中央にもっていきましょう。今日の体が気持ちいいと感じる場所を選んで膝の位置を決めましょう」という指示が出されるかもしれない。
4⃣ ポーズに入る前に準備をする
ポーズに無理なく入れるように、関節を整える運動をいくつか組み合わせて行う。理学療法の運動、ピラティスの基本動作などをヨガに加えれば、可動性や筋力を高めることができるだろう。
この方法は私に合っているだろうか
「ヨガポーズ分解法」はどんな人にも効果があるが、以下のいずれかに当てはまる人には特に有益である。
●けがをして理学療法を受けたが、まだ従来のヨガのクラスに戻ることができない。
●ヨガをしていて痛みを感じたりけがをしたことがある。
●ほとんどのポーズに必要とされる筋力、可動性、制御力が足りないと感じる。
●医療の専門家からストレスや痛みの緩和のためにヨガを勧められている。
●生まれつき柔軟性が高くて、一部のポーズでは関節を支えるのに必要な安定性が足りないと感じる。
●ヨガの練習を積んできて、180度に開脚するポーズやアームバランスなどの難度の高いポーズに挑戦している。
●ヨガを教えていて、生徒が必要としていることにもっとうまく応えたいと思っている。
体の広がりを手に入れよう
ラクダのポーズを例に、実際にヨガ・デコンストラクティッドを体験しよう。
①簡素なうつ伏せの礼拝
始める前に、立位または座位で頭を静かに左右に回したのちあごを胸のほうに引いてみて、首と胸部がどのくらい伸びるか確認する。
次に、床にうつ伏せになる。足を腰幅よりやや広く開き、左手の上に右手を重ねてその上に額をのせる。
頭と手は動かさずに、右肘をゆっくり床から上げて下ろす(5回)。肩甲骨にどんな影響があるか観察する。次に、左手を上にして左側でも同様に5回行う。
そこから額を左手にのせ、ぴったりくっつけたまま頭と左腕を一緒に床から上げて下ろす(5回)。次に、右手を上にして右側でも同様に5回行う。
起き上がり、最初に確認したように頭をゆっくり静かに左右に回し、あごを胸のほうに引いてみる。最初よりも簡単に感じられるか、背中の上部と中央部の可動域が変化したか観察する。
②ブロックを用いてボールのように転がる
床に座り、足を前に出して膝を曲げる。太腿とふくらはぎの間にブロックをはさむ。すねの中央に手を当てて、背中を丸めていく。足が床からかろうじて離れている状態でバランスがとれるまで体を後方に傾ける。
ブロックを落とさずに、背中を丸めたまま体を後方に転がす。肩甲骨が床に触れたら、同じ姿勢を保ちながら体を前方に転がす。最大8回繰り返す。
③横向きで体を本のように開く
左側を下にして床に横たわり、左腕を肩から真っすぐ伸ばす。頭の下に折りたたんだブランケットを2、3枚敷いて、背骨の延長線上に首がくるようにする。両膝を直角に曲げる(膝と膝の間にブロックを入れてもよい)。右肘を曲げて、右手を頭の後ろに当てる。
背中を反らし、胸郭を回転させて、頭を天井に向ける。両膝をずらさず、骨盤を動かさないようにしよう。最初の姿勢に戻る。5回繰り返したら、反対側も同様に5回行う。
④腕を滑らせる針の糸通しのポーズ
折りたたんだマットの上に膝をのせて、四つん這いになる。体の正面に折りたたんだブランケットを用意して、左手をのせる。左腕を内旋させて、指先を右側に向ける。
右肘を曲げながら、左腕を右に滑らせ始める。胸郭も自然に任せて右に回転させる。肘を伸ばして最初の姿勢に戻ったら、今度は右手をブランケットにのせて、右側も同様に行う。左右交互に繰り返し、5回ずつ行う。
⑤ジャイロスコープのように円を描いて回る
ブランケットをマットの前にふわっと広げる。マットの上にひざまずいて、両手をブランケットにのせる。手首と肘が肩の真下にくるようにする。背中を丸めて、両腕を中央に向かって内旋させる。
右腕を前に出してやや左側に滑らせる。息を吐きながら、左肘を下げて左腕を右に滑らせて、胸郭も右に回転させる。息を吸いながら四つん這いに戻ったら、反対側も同様に行う。左右交互に繰り返し、5回ずつ行う。
⑥ブロックを用いたテトリス
ひざまずいて頭頂部を引き上げる。腕を体側に下ろして、片手にひとつずつブロックを持つ。腕を両側から頭上に伸ばしていき、左右のブロックの短い辺が触れたら動きを止める。次に、腕を下げて後方に伸ばしていき、体の後ろでブロックの短い辺を合わせる。腕を動かすときに、胴体は動かさず、骨盤と背骨をニュートラルに保とう。上下5回ずつ行う。
⑥ブロックを用いたテトリス
⑦腕を伸ばしたラクダのポーズ
ひざまずいて頭頂部を引き上げ、つま先を立てる。ブロックを縦長にして、右足のかかとの外側に置く。目線を右足のかかとに向けて、右手をブロックの上に下ろしながら、左腕を頭上に上げる。右手でブロックをつかみ、右腕を上げて左腕と平行にする。右手から左手にブロックを移し、左腕を下げてブロックを左足のかかとの外側に置きながら、右腕をさらに引き上げる。体を中央に戻す。骨盤が常に前を向いているようにしよう。左右交互に最大5回ずつ行う。
⑧静的なラクダのポーズ+懸垂の動き
マットの中央にひざまずいて頭頂部を引き上げる。高い鉄棒をつかむように、腕を真上に伸ばす。拳を握り、臀筋と腹筋を働かせながら、肘を外側に開き、肩を滑らせるように下げ、胸椎を反らせて緊張を生み出す。3~5回呼吸する間ホールドし、最初の姿勢に戻る。
⑨ラクダのポーズ
ひざまずいて頭頂部を引き上げ、つま先を立てる。背中を丸めて、あごを押し込めながら、前屈し、手でかかとを包む。次に、背中を丸めてあごを押し込めた姿勢のまま、胸郭を太腿から離すようにゆっくり引き上げる。
あごを軽く押し込めたまま、胸郭を引き上げ続け、背中の上部を伸ばし始める。腰をかかとから離すように引き上げ、体を反らせて、骨盤を前方に動かし始める。背中を少しずつ反らせながら、腰から離していく。
つま先を立てて腕を真っすぐ伸ばした姿勢のまま、背中をさらに反らせて、骨盤を前方に動かす。あごを軽く押し込んだままでもよいし、首が安定していると感じる場合は首をゆっくり後ろに傾けてもよい。
ポーズから出るには、以上の動きをゆっくり逆に行う。具体的には、後屈姿勢から体を引き上げて起こしたのち、かかとに腰を下ろしながら、首と背中の上部をゆっくり丸めて、あごを押し込める。